西營盤にある40年以上の歴史ある小さな飲茶のお店「叁去壹（サームホイヤッ）」

さて今回の記事では、西營盤（サイインプン）にある、40年以上の歴史を持つ飲茶点心のお店「叁去壹（サームホイヤッ）」こと、德記叁去壹點心粉麵飯（ダッゲイサームホイヤッディムサムファンミンファーン / dāk gei sāam heui yāt dím sām fán mihn faahn）をご紹介します。

香港内のレストランチェーンの多くが点心作りをセントラルキッチン方式にする中、こちらのお店は40年以上変わらず自家製手作りの点心を提供しています。新年と清明節をのぞく年中無休で朝4時半から営業し、午後2時には閉店するスタイルを長年続けてきました。小さなお店ですが、近所に住む常連客が多く、その中には近隣学校の学生や教師も含まれています。その昔には常連客の教師のひとりが、このお店のスタッフの心をこめて点心を手作りする熱意に感動し、英語訳のメニューを作成してお店に提供したというエピソードもあるそうです。

そんな地元民に愛されている昔ながらのローカル飲茶店の叁去壹は、もともと賃貸契約の期限が今年2020年3月までとなっていました。コロナ禍の影響で数多くの老舗レストランやカフェの閉店が相次ぐ中、逆にコロナ禍が転機となって叁去壹は新世代に引き継がれることになり、再注目されています。

「叁去壹」という珍しい店名の所以

そもそもの店名にある叁去壹（サームホイヤッ）ですが、日本語で直訳すると「さん引くいち」となります。こちらは色々と増減を経た創業メンバーの成り立ちが由来なのだそうです。もともと3人で出資してお店をスタートしようとしたところ、予定メンバーの一人が父親に反対されてしまい脱落（そして、オーナーとしてではなく従業員として加入することに）。3人で用意するはずだった開店資金6万香港ドルを、残された2人が用意することになり、資金調達に苦労したという当時のエピソードから叁去壹（サームホイヤッ）と名付けられました。当時の6万香港ドルは、点心職人にとって相当な負担であったと思われます。その後これまで約40年の間に、また1人が抜け、4人が加わり、最終的には5人の出資者によって運営されてきました。

しかし40年も経つと、さすがにメンバーの老齢化がすすみます。ほぼ年中無休で営業してきたともなると体力もつらくなるはず。「そろそろ引退したい」というメンバーが出てきたのが昨年2019年の秋頃。そして、初代からのメンバーである王燦枝さんは、別の飲食店に従事していた息子さんに声をかけ、賃貸契約を満了するまでの期間として、息子さんとその友人にお店の手伝いを頼むことにしました。若い人にとって毎朝3時に起きて4時前にお店に出勤するのは相当な苦労だったでしょう。息子さんがお店を手伝うようになると、多くの常連客から「お父さんから点心の技を学んで店を受け継いでほしい」と声をかけられたそうです。